神谷町
Akari Chika
道に沿って歩いていくときに
目を閉じた
東京タワーの寝言が聴こえた
おやすみなさい。
安らかに
誰の優しさ汚すこともなく
眠りに就くあなたを見守ろう
昨日見た飛行船の夢が
今日、
あなたの窓に停泊したよ。
空から不思議な色が流れても
あなたはずっと変わらずに
目を閉じていて
何故こんなにも
満員電車に揺られながら
暗い窓に映る人々の顔が
沈みこもうとしていても
となり合わせる人並みに
涙の影をさらわれて
喉がつかえてしまうのを
季節のやわらかさを
物語るように
移ろう昼夜を
抱きとめるように
膝元濡らす悲しみの波に
なつかしげな顔を浮かべながら
佇まいを 直すのは
あなたがいつもそこに立っていてくれるから
あなたの微笑みに
気付かされたから
地下鉄のドア
語ることない
まぼろしばかりが続く
夏
何故こんなにも
湿り気を帯びた
袖口から
握りしめた手の感触が
わたしを困らせてしまうのは
こころの緩め方を
あなたにだけ許してしまったから
東京のまつ毛は上向きに
月への道を伸ばしている
おやすみなさい。
安らかに
誰の優しさ汚すこともなく
眠りに就くあなたを見守ろう
地下鉄の隅に
瞳を映して
同じ夢を 分け合おう