マーメイド
榊 慧

マーメイドは普通じゃない
マーメイド、夜の海でしか泳げない、
冬は寒いね。
夏がくるね。

マーメイド、弱ってる、マーメイドが弱ってる

泣いている踊り子がいた。
マーメイドは話しかけた。
うまく回れないから捨てられるって踊り子が泣いている
マーメイドはこう言った
「わたし海とか湖で泳げないの。」
私の変わりに海で泳いでごらん、
くるくるくるくるたくさん回れる。ね?
踊り子は泣きながら聴いていた。
「それでも不安なら私の肉を食べさしてあげる。」
「マーメイドの魔法。」

マーメイドは弱ってる
マーメイド、弱ってる

マーメイドは待っている
なにもない日本を
マーメイドは絶望した人たちに
「わたしの代わりに夜の海で泳ぎなさい?」
って、魔法の青磁色した鱗をわたす。
マーメイドは、
微笑みながら人が泳ぐ様子を見てる
夜の岩の上で。

マーメイド、弱ってる、
「抱きしめてくれないといや。」



自由詩 マーメイド Copyright 榊 慧 2012-06-22 15:28:51
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