習 家族の肖像
ズー



祖父がお風呂にはいってからずいぶん経つが、水をいつまでも持ってこない母を怒鳴りちらすのがわたしたちの父であり、入れ歯のおちた印度カレーを前に、斜交いに正座している祖母の息子、つまりその父はまだ帰らないまま中央に盛られた野菜サラダに唾がとんできやしないかと姉は心配している。一卵性双生児として姉は父の娘であり、妹のわたしは祖父の息子の子、姑の孫で、父と結ばれた母のこどもだ。印度カレーといっても母はインド人ではない、父も東京の人ではないし、それに祖父は戦争を体験した。祖母曰く、翼をはやして帰ってこなかったらしい、と父、わたしたちは祖父の息子からそう聞いて、祖父がお風呂にはいってから祖母はわたしに尋ねてくる。


自由詩 習 家族の肖像 Copyright ズー 2012-06-20 12:31:00
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