未季明
木立 悟






陽のかたまりが
荒れ地の斜面を流れ落ちる
何もない場所が
何もない拍手に華やいでゆく


指に沈む 爪の長さ
雪でできた肉厚の葉に
花は無い 花は無い


多重の夢の終わり得ぬまま
どこにも着かず離れぬ原の
ひとつの穂だけが揺れる風波


蜘蛛の巣と涙と
イーゼルの森を越えると
蒼い道が現われ
光が光を 水が水をわたりゆく


黒へ黒へそびえる緑
径を呑み 夜を呑み
なお暗くなお渇きまたたいている


息のとなりの
もうひとつの息
夢を鎮めに寄り添うもの
尖った曇の迷いを見送る


鏡のふりした鏡にも
音を映すことが赦されて
泥のなかのひとかけら
欠けた歌の ひとかけら


誰も色を尊ばない
羽の数も 背の歪みも顧みない
どこかへ行こうとするものらを
ひきとめることさえしはしない


あふれ あふれ あふれすぎて
あふれぬものを知らぬ光が
ひとつの永い曇の下で
にぎやかな顔を聴いている


うすくひろがり
居つづける朝焼け
樹を束ね 樹を束ね
明けなさを明けなさに梳いてゆく





























自由詩 未季明 Copyright 木立 悟 2012-06-17 22:38:11
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