光が煙のように立ちこめていた
ただのみきや

おれは殺風景
 がらんどうで埃濛々


 だから昼の檻に閉じ込められた
オオミズアオなんか見つけると
こんな錆びついた工具のような手をしながら
そっと 捕まえてみたくもなるものさ


 薄暗がりに咲く鉄線の紫
震えるように飛翔する妖精の姿
ほんの少しだけ関わってみたくなったのさ
すれ違ってばかりだった綺麗なものたちと


おれは不器用な殺し屋
 マントに包まれた茫漠だ


 だからこの手の中で綺麗がもがく
青い鱗粉が剥がれ落ちて行く
白い躰が崩れ落ちて行く
あぶら汗のような時間がいのちをむしり取って行く


 三面鏡の奥の奥
泣き出す寸前の子供の顔の奇妙な歪みと裏腹に
浸食された岩のような顔なしの動作が
無言で手放す 陽が射し貫く石の海へ


おれは目を持ってしまった欲望
 鍵の壊れた孤独
  逃げ水を湛えた
   焼けたアスファルト


自由詩 光が煙のように立ちこめていた Copyright ただのみきや 2012-06-17 22:10:47
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