無口な男爵
無限上昇のカノン

男爵は いつも無口で
広いとはいえない 館の庭で
空を見上げて過ごしている
男爵は いつもひとりで
社会情勢にはまるで無関心
話しかけても 退屈そうにまばたきするだけ

男爵の世界はとても狭くて
館と庭が彼のすべて
家庭教師はとっくにクビにして
政治経済には興味がない
男爵の庭には出口がないから
世の中を知る必要もない


男爵の気持ちが ほんの少し 分かる気がする
足掻いても逃げ出せないなら 知らない方が幸せ
社会は男爵を軟禁して 自分たちの正義を振りかざしているけれど
男爵に睨まれることを恐れている
だけど 証言台に立っても男爵は何も言わないと思うよ

そんな男爵だから 私は側にいるんだ




自由詩 無口な男爵 Copyright 無限上昇のカノン 2012-06-16 08:10:07
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