雨戸のうちそと
木原東子

突然雨戸が
何語かで話しかける どうしたの、何
小さなビスケットの家の
窓には童話色のカーテン
それじゃ無理

雨戸は不満を述べてノックする
何か起こったの、今から起こるの
小さな庭のひまわりの林
ほたるかづらの花の群れ
かれらは無力

猫が爪を立てる、ぴゅーと風笛を鳴らす
突風が拳を使い
時雨にも濡れ、雷鳴とともに振動する

古い雨戸の伝える気配
天地のご機嫌

雨戸のうちでは
お馴染みの悪あがき
ついには
いつか独りになり

地が揺れ
水の山が覆いかぶさってくる
突然雨戸が沈黙するとき
意識は消滅するだろう
さようなら、世界よ

おいとまを述べる暇もありませんでしたが
毛皮も爪も牙も装備してなければ
がらくたで身を囲うのみ
そのがらくたを残すのみ

さようなら、愛しいものよ


自由詩 雨戸のうちそと Copyright 木原東子 2012-06-13 22:29:10
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