雨の日は
そらの珊瑚

雨の日は
透明傘がいい
値段の気安さがいい
ドームの曲線を
雨が流れていくのを見るのは
誰かが
泣いているのを
見ているようで
そんな後ろめたさもいい
そういえば女優でもないのに
涙を見せるために
上手に泣く女がいて
ぼくなんか
そうだとうすうす分っていても
どきっとする
そういう女は大抵
見た目は美しいから
ぼくなんか
なんど
何度騙されても
学習できない

雨の日は
紫陽花が美しい
うららかな春の日には
きっと似合わない
似合わないことを知っているから
雨の季節に咲くのだろう
きままな色で着飾る女のように
涙を武器にする女のように
それにしても
あの時の
涙は本物だったのだろうか

今となっては
どうでもいいことのように思える
女が
「ごめんなさい」と言ったのか
「さようなら」と言ったのか
覚えていないのだから

晴れたら
その辺に
置き忘れてきても
惜しくはないから
執着のない愛だって
もしかしたら在るはずだから
雨の日は
透明傘がいい
ぼんやりと景色が見えるのがいい
向こうから
赤いレインコートを来て
歩いてくる女が見えるのがいい
雨の日は透明傘がいい
雨のゆくえをあれこれと
たどることができるから
雨の日は……


自由詩 雨の日は Copyright そらの珊瑚 2012-06-12 21:23:05
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