アラスカ
智鶴

朧な碧い部屋で
私、夢を見ていたのね
溜息一つ、デキャンタと冷めた灰皿
白いレースで覆い隠されて
私の全てが嘘みたい

スローでムーディな音楽を
誰と聞いていたかしら?
花の名前のグラスを手にして
私は誰と話していたかしら?
冷たいカウンターの感触を
ただ掌で感じていただけ

重なっていたのは
私と私の幻
向かい合った鏡の裏を覗いて
其処にいたのは透明な体温
見つからないのは
私と貴方の期待と
グラスの重なり合う瞬間

貴方は私の温かな偶像
そして鮮やかな残像
砂漠に満たした碧色を掬いあげて
忘れてしまう前に喉に流した

滑らかな紅は全て
碧い貴方のせいにして
もう一度溶け込んでしまおうかしら
砂漠に転々と残したアラスカで
貴方の行方も辿れるかしら

甘く曇った世界は狭いから

ねぇ。


自由詩 アラスカ Copyright 智鶴 2012-06-12 21:14:47
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