夏草の蔓がからむころ
寅午

ぼくらの町に
ヨシキリがかえってきた
一羽は川沿いの桜の木に
もう一羽は中州の葦のしげみでなきかわし
恋の歌をうたっていた

そんなとき、子どもたちがドヤドヤやってきて
このちょっと変わった声の持ち主を
見きわめようと木を見上げた

くちぐちに子どもたちの声がこぼれ
ヨシキリは 木のうえから
「あなたたちがそこにいると
 ぼくたちの恋路の邪魔です。

と、言いつのったけれど
とんと、子どもたちは
鳥の言葉がわからないので
木のしたにシートをひろげ
初夏の午後をすごして
二羽の鳥をさんざんやきもきさせたそうな。


自由詩 夏草の蔓がからむころ Copyright 寅午 2012-06-12 19:42:08
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