夏草の蔓がからむころ
寅午
ぼくらの町に
ヨシキリがかえってきた
一羽は川沿いの桜の木に
もう一羽は中州の葦のしげみでなきかわし
恋の歌をうたっていた
そんなとき、子どもたちがドヤドヤやってきて
このちょっと変わった声の持ち主を
見きわめようと木を見上げた
くちぐちに子どもたちの声がこぼれ
ヨシキリは 木のうえから
「あなたたちがそこにいると
ぼくたちの恋路の邪魔です。
と、言いつのったけれど
とんと、子どもたちは
鳥の言葉がわからないので
木のしたにシートをひろげ
初夏の午後をすごして
二羽の鳥をさんざんやきもきさせたそうな。