蟹屋の丁稚
まきしむ
自分をくそ人間だと思う人格で生きてます
今日蟹屋に初めて出勤しました
店の外の水槽、ここから蟹を取り出し
捌くわけですが新人なんでそんなことさせちゃもらえません
水槽磨きです。手ぬぐいを水道水で湿らせぎゅっとしぼり
丁度いい塩梅にしきゅっきゅっとやりました
つまらない、やめたい、そう思いました
わたしは店の者が中にひっこんだのをいいことに
逃げ出しました。白い上下の制服と黒の長靴、
帽子だけは脱ぎそこらのしげみに放り投げ、
ひくひくと、陽気を装いながら変なリズムで歩き始めました
近くに公園があることを知っていたので、
とりあえずそこを目指すことにしました
公園。用がなくても行ってよいことになっている場所、
というのは実際そう多くありません
わたしはいつもお世話になっております
公園は愛すべき場所です
平和の象徴、鳩がぱたぱたと音をたて散開しました
私は入ってすぐ目の前にある滑り台を右に折れ、
白いコンクリートに植えられた灌木に挟まれながら
奥のほうへと進んでゆきました
遠くのほうで子供の声がしたような気がいたしました