時の砂
そらの珊瑚

忘れていたわ
時の砂は音も無く
ふりつむ透明な悪魔だってこと

どこへいようと
逃れることはできない
生の終着駅が死であることから
逃れることはできない

気づかぬうちに
若葉は枯葉となり
葉脈に
かつてとうとうと流れていた
水路の思い出を刻むだけ

時の砂は
今この瞬間も
鏡の中に無邪気に舞い降りて
うかつに
それをのぞき込んだ私を
あっという間に
老婆に変える

忘れていたわ
旅をしていたことを
ゆらゆらと
蜃気楼に浮かぶ楽園へ
たどりつくことは
永遠にないということを





自由詩 時の砂 Copyright そらの珊瑚 2012-06-11 10:22:08
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