擬似恋愛
南 さやか


幻影のような朝が来る
鬱蒼と立ち込める靄と 聳え立つ樹木

ありふれた瞬間をこんなに愛しく思うのは
きっと 恋に落ちたから…

行ってしまった君を二度と 笑わせることが出来ないのなら
ともに生きた頃の安らぎを せめて再現したい
目の前に眠る幻の 乾かぬ涙を拭うより
その人を君だと思って
誰かを愛する方がまし

偽りから生まれる思いはまるで
この景色のようだね

霧の向こう側に身勝手な夢をリピートしながら
いつか真実が動き出す その時まで
耐え忍ぶ胸のうちを悟られぬよう

僕は幾つもの嘘を飲み込んで行く



自由詩 擬似恋愛 Copyright 南 さやか 2012-06-09 03:24:23
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