夕陽
カワグチタケシ
双眼鏡があるのなら真昼の空を
レンズをのぞいてごらん
土星の環だって見えるよ
すっかり殺戮のすんだ廃墟のむこうに
海のように大きな川が流れていて
沈んだばかりの夕陽が
水平線を美しく染めている
フェリーの舵をとる人がいて
家路につく人がいて、対岸には
もう帰らない人を待つ人がいる
別の橋を焼き落とすこと
が信じるということ
だとしたら、僕たちは
とてもかわいそうだ
自由詩
夕陽
Copyright
カワグチタケシ
2012-06-09 00:38:12