ひかり かさなり
木立 悟
すべての水の凶兆に立ち
濡れた緑を見つづけている
静かな悪魔が建てた街
どこまでが幻か
袋の底の底をまさぐる
鳥のような 砂のような
瞳が沈み 昇る真下
ねじれひろがる影を片手に
咲きすぎた花を触れめぐる
曇より低く
空わたる網
したたり落ちる 音の碧さ
くちばし 命運
光 静脈
道は太く 直線でなく
まぶたまぶしさ
沈殿 まばたき
どこか似ている 億の物語
白と虹のはざま
屋根つたう午後
もどらない曇
影なき通り 置き去りの息
壁のうしろに積もる歌
翼は下る 坂を下る
雨を追う指
喉に着き
窓のむこうの煙に震える
打ち寄せる陽が
原を照らす
夜はすぐに やってくる
造っては棄てられた街の群れから
雨は雨のなか動けずに
空の行方のざわめきを聴く
軽い寝具 蜘蛛の脚
遠い砲声
夜を昇る