夕餉
梅昆布茶
今日もあせをかいて老母と
子供たちと彼女のあしたのかてを用意する
支払いが間に合わないことなんてたいしたことじゃないさ
金星はゆうゆうと太陽面を通過して
菊地直子もつかまった
消費税も上がるだろう
世界はひとつの結論で快適に倒置されて
僕の部屋の懐かしい乱雑さも
荘厳に維持されてゆく
なんて悲しい夕暮れだろう
もうラッパを吹いたとーふ屋のおじさんはいない
びっこの犬が長いかげをひきずって
原子炉の建屋とのっぺらぼうの海岸線のあたりを彷徨っている
H.G.ウェルズが想像のなかで描いた太陽の終焉と
暮れかけた赤黒い風景のなかでうごめく異形の生命のように
なにかに支配されてねむるような足取りで
僕はこの悲しい混沌を整理したかった
そして敬虔な異教徒の夕餉を
血だけがつながっている
あるいは血さえもつながっていない家族たちと
ともにしたかっただけなのだ