タルトタタンの詩
パラソル




タルトタタンをまっぷたつに割ると 忘れかけてた黄色い生地から
たくさんの見えない船旅が
競走馬のように水平線に向かって道をつくる。

水平線の向こうには大きなコップの頭が見えている。ズボンのポケットから
取り出したハンカチのように必然に見せかけた偶然。

コップには紫色の水が入っている。それはすっぱい匂いの水。
水の中を人間が泳ぐ。1945年に流行った水着を着て。
すっぱいにおいがこびりついたまま爆弾が落ちて
記憶がそのまま

海のとなりに皿があって、それからタルトタタンがその上にどさっと
おかれている。
包丁でいくら切っても黄色い体から血が出ない
つよそうなタルトタタン

そのままコップの中の水といっしょに なかよく行進するタルトタタン
水平線に向かって自分の考えは持たずに体はバラバラになって
行進するタルトタタン

赤いねばねばした誰かの舌にふれて 「あまい」という言葉を
頭の中にやどらせるように
命令したタルトタタン

すっぱい水といっしょにぐちゃぐちゃにされて
「ちょうどいい」と思われたタルトタタン

そしてすっかりなくなって、しばらくしてから忘却のかなたに
飛び立つタルトタタン。
ロケットに乗って飛び立つタルトタタン


自由詩 タルトタタンの詩 Copyright パラソル 2012-06-05 01:34:18
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