「砂漠に蒔かれた種たちは」
ベンジャミン

砂漠に蒔かれた種たちは
けして芽吹くことはないと
それは誰にもわからない

渇ききった大地に
足りないものはなんだろうか

水だろうか
水を与える人なのだろうか
雨を降らせる雲なのだろうか

   ※

みわたしてみる世界
それは色にあふれた砂漠と同じ

そして人は
それぞれの名前を持った種なのだ
ひとつひとつは小さくて
それのみでは弱い

   ※

足りないものはなんだろう

お互いを思いやる気持ちだろうか
苦楽に流す汗や涙だろうか

   ※

砂漠に蒔かれた種たちは
けして芽吹くことはないと
それは誰にもわからない

ただひとり
空に向かって手をのばし
それがまるで一本の木のように

まるで世界のほんのわずかを
それぞれがそれぞれの名前を持って
小さく支えているように思うのは

この砂漠のような世界がつくりだした
大きな誤解なのだとしても

   ※

何もない大地の上に起立したら
あの空とこの大地をむすぶように

ただ一本の木になることは

たったひとりであったとしても
けして難しいことではない

 


自由詩 「砂漠に蒔かれた種たちは」 Copyright ベンジャミン 2012-06-04 18:38:19
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