コロッケ その2
ふるる

夜ご飯の支度をしていると
息子が
「今日はなに?」と聞きました
「コロッケだよ、手伝って」
「ああ」

寝そべってゲームをしている息子は
14歳
去年私の身長を抜きました
伸ばした手足や
真剣な横顔を見ると
はっとします
もう少年期が終わりに近い
青年っぽい

丸めたコロッケに、小麦粉をつけて、卵にくぐらせます
パン粉をつけるのを手伝ってもらいます
息子は4個以上食べるので
買うより作ったほうが安い

夜ご飯タイム
息子はたまに面白かった出来事を話してくれます
「今日、手でカメハメ波打ったら、友達が二人、ころげたりしてくれた」
「ハハハ」
「帰り道で、お母さんにだっこされてる赤ちゃんの顔が、ものっそいしかめっ面でウケた」
「ヘヘヘ」

私たちは笑ったり、黙ったり、テレビを見たりしながらご飯を食べます

ありがたい
地震の日以来
本当の本当の本当の意味で
ありがたくなった日常の時間を
熱いコロッケと一緒に
噛みしめます

「そのうちこの少年がもっと大きくなって
いつか
コロッケを3個以上食べるようになったら
自分で作ろうかな
手伝わせればいいや
手伝ってくれるのかな
と思ったり、します」

などと、詩に書いたことがあったなあと
思い出します

今となっては
いつ、なんどき、何が起こるか分からないと知った
今となっては
いつか、などと思うことは恐ろしく贅沢


この
瞬間が

穏やかであれば

もうそれ以上の望みは贅沢だと

思わざるをえないのです




自由詩 コロッケ その2 Copyright ふるる 2012-06-03 21:58:41
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