朝の街路樹
殿岡秀秋

思わぬ方角から飛んでくる
ボールのように
不幸は突然
ぼくに当たる

視界が狭くなり
周りが暗くなって
倒れるときに
歪んでいくぼくの顔が見える

しばらくしてもうひとりのぼくが
起きあがり
朝の地平線に
白い靄が湧くのを見る

街路樹の枝が腕のように伸びて
歩きだすぼくの行く手をさえぎる
ヒノキの枝が蛇のように
からだをからめ獲っていく

両手を振り上げる
葉をむしったり
小枝を折ったりすると
枝がほどけてゆく

ヒノキの葉に
銀色に光りながら
米粒くらいの小人たちが
種のように並ぶ

手で枝を払うと
小人たちはいっせいに跳ねて
目の前でくるっとまわって
ぼくの口や鼻から身体にはいっていく

からだの中を小人たちが
運動会のように走りまわる
ぼくがスキップしながら口をあけると
小人たちは飛びでていく

地平線に頭をだした朝陽の上を
小人たちは歌いながら
駆けあがっていく
ぼくも後をついて昇っていく

倒れていたぼくは立ちあがり
口元が緩むのを感じながら
足を交互に動かして
街路樹の間をゆっくり歩きだす



自由詩 朝の街路樹 Copyright 殿岡秀秋 2012-06-03 10:43:40
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