飛ぶ鳥をよく知らない
いとう



消えていく
痛みをなぞりながら
その痕こそが
証であるかのように

鮮やかに
鳴いている
幾羽か、を、目に
焼き付けることもなく
空の夢をよく見るのだと
その人はうつむく

飛ぶ鳥をよく知らない
そのままの姿勢で
空も凝固している
小指の爪が冷えるほどに
見上げることも
見上げられることもなく

その人は知らない
在ることを知らない
消えていく
痛みをなぞりながら
飛ぶ鳥の夢は見ない
空の夢を見るのだと
小指の爪を毟り取る
まぼろしの
羽根の代わりに





未詩・独白 飛ぶ鳥をよく知らない Copyright いとう 2004-12-08 00:13:16
notebook Home 戻る