バンソウコウの数
藤鈴呼


染みったれた 思い出に
縛られるのは 嫌で

今さっき 着いた
染みの付いたシャツを

思い切り 脱ぎ捨てて 
冷水で 洗った

さっき 大根の代わりに擦った
指の傷は
未だ 痛むのだけれど

取り合えず 洗い流したから 平気
見た目には 血の色は 消えたもの

目に見えぬものだけを 探して 漂う町は
暮れ 藍色から 真っ暗闇に 代わり
灯火だけが 我等の刻とばかりに 瞬く

順繰りに数えた バンソウコウの数
散らばった 赤い染みだけ
胸に 仕舞い込み 進むよ

もう 衣替えも とうに 過ぎた 頃だろう

冬物の コートを出す 必要なんて 無い
狭い クローゼットは 開けっぱなしで
明けぬ夜を待つ 寂しさも 思い出せない

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自由詩 バンソウコウの数 Copyright 藤鈴呼 2012-06-01 22:56:07
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