Margaret
月乃助



時をなくした
厚化粧の白い駅舎から
チョコレート色の客車にのって
町にいく
森の切り通しの影たちを往き過ぎれば
たいらな田園の景色が心の扉をたたく
町の商店街には、小さな旧びた映画館がひっそりと
年老いた娼婦のように客をまっている
マチネーは観客も六人ほどで、わたしは
ユダヤの少女の 鍵の映画が、みたかったのだけれど
男は、鉄の女の話をえらんだ
信念.という鎧は、戦いを求める宗教のような
固さがつきまとう そんな物語だった
いつか 鉄は錆び ぼろぼろになった女が
映像の 薄日がさす居間にすわっていた
鉄ではいけないのです
容(かたち)のないものに 心をひかれ
薄衣をまとった森の女は、
裸さながら 自分がそうであることに気づいている
( 子供が、年寄りが、森の住人たちが指をさす )
それなのに、それを恥ずかしいとも、あやういとも
心にとどめることもない
帰りに誘われるまま 
ペルトコンベアーにはこばれる 工場化されたお寿司を食べ
コインをいれ 自動販売機にでてくるお寿司の近未来を想ったりした
外にでると 絹糸がはねる時雨だった
うれしくて 雨の中を歩くのが好きなのです と、言うと
連れは、めずらしい虫を見るような目で、じっと
わたしのことを眺めていた










自由詩 Margaret Copyright 月乃助 2012-06-01 21:32:43
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