いびつ
永乃ゆち






ぬかるみに寝そべって見たお月さまは

丸いというより少しいびつな形に見えた

生涯の伴侶と決めた人を差し置いて

愛する人を想う気持ちに似ている

いびつ

この想いが成就する事はないけれど

愛してしまった以上後には戻れない

叶わぬ思いに涙する意味など

きっと無いに等しい

いびつ

鏡に映った私の顔は

日を追うごとに歪んで行く

背徳と情熱と恋情と嫉妬に狂っている

独り息もできないまま

いびつ

太陽を直視できない愛などは

あってはいけないものだと人は言う

明るい道を背筋を伸ばして歩けない恋などは

邪道だと皆は言う

いびつ

私はいびつ

何者にもなれないままに

愛を着地させる場所も知らずに

歪んだ頬で笑う

引き攣った目尻に涙を溜める

本当はただひっそりと

素直に愛したいだけ


自由詩 いびつ Copyright 永乃ゆち 2012-05-30 23:08:15
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