爪
takano
茫洋として
時間が止まると
爪をみている
視界に映る景色は
脱色して垂れ下がり
行き詰った欲望が
ただ一点を渇望しはじめる
空腹だからではない
意識の群れが
行き場を見失って
一点に群がりはじめたのだ
出口がみつからないままに
停止した時間を
食べはじめる
爪は裂きいかのように
繊維の1本1本を
剥がされていく
像としてむすばれない
浮卵の欠片が弾け
不在の母を憎むように
幼児になった私は
紙片を前に
爪を吐き捨てていた
自由詩
爪
Copyright
takano
2012-05-29 18:40:00
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