記憶の迷子
Seia


夕陽が沈んだビルを背にして

大通りを真っ直ぐ南へ

三毛猫がいた交差点を右に曲がれば

あの時の場所に着くはずだった

太陽はさんさんと照って
コンパスはぐるぐる
三毛猫なんて居やしない

こうして私は 記憶の街を彷徨う

交番も見当たらなければ
ひとっ子一人居なくて
誰かに尋ねる事も出来ない

こうして私は 記憶の街を彷徨う

薔薇が積もった側溝を左に

路地を時計回りに回って

ツバメの巣を目印にしたら

あの時の場所に着くはずだった

薔薇はいつか流されて
路地は区画整理され
ツバメはもう巣立って

こうして私は 記憶の街を彷徨う

端末は黒い画面のまま
Wi-Fiも繋がらなければ
Googleなんて意味もない

こうして私は 記憶の街を彷徨う

こうして私は 記憶の迷子になる


自由詩 記憶の迷子 Copyright Seia 2012-05-29 13:32:18
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