記憶の迷子
Seia
夕陽が沈んだビルを背にして
大通りを真っ直ぐ南へ
三毛猫がいた交差点を右に曲がれば
あの時の場所に着くはずだった
太陽はさんさんと照って
コンパスはぐるぐる
三毛猫なんて居やしない
こうして私は 記憶の街を彷徨う
交番も見当たらなければ
ひとっ子一人居なくて
誰かに尋ねる事も出来ない
こうして私は 記憶の街を彷徨う
薔薇が積もった側溝を左に
路地を時計回りに回って
ツバメの巣を目印にしたら
あの時の場所に着くはずだった
薔薇はいつか流されて
路地は区画整理され
ツバメはもう巣立って
こうして私は 記憶の街を彷徨う
端末は黒い画面のまま
Wi-Fiも繋がらなければ
Googleなんて意味もない
こうして私は 記憶の街を彷徨う
こうして私は 記憶の迷子になる