心の向こうで絵を描いているあなたへ
ただのみきや

夢から覚めると
午後は陽炎の中 寡黙に佇んでいた
翻る あなたの影だけが冷たい魚


見も知らぬ者同士 これが
いつかの夢ではないと言えるでしょうか


ひび割れた心象が決壊する時
流失したわたしは
光と風が点描するあなたの公園で
心地よく迷子になるでしょう


あるいはこの小部屋で
素描のあなたを解いては
闇に蠢くムカデのような
文字の連なりに編み直すのか


定義は文字の石垣で心をも取り囲む
イメージは境界を越えて打ち寄せる波


あなたの夜がわたしのノートに刺青をする
わたしの口笛があなたのキャンバスに種を蒔く


戦慄くこともなく
圧力が解き放たれる
わたしたちのどちらかが
ひとつの超新星に変わるとき


押し寄せる不可思議なインスピレーションには
時間と距離が比例しません
この世の色恋沙汰が反比例だとしても


小首を傾げ ふと 佇むのでしょうね


どうか思いのままに描いてください
それは遠い未来よりも新しいもの
それは思い出よりも懐かしいもの
一つの冒険なのですから


自由詩 心の向こうで絵を描いているあなたへ Copyright ただのみきや 2012-05-28 23:31:31
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