魂の宿
小川 葉
海老フライが網にかかる
隣の船では大トロが大漁だ
赤身は人気がないので海に離す
いつか大トロになることを願って
畑にハンバーガーの実がなっている
産地に行けば生産者のスマイルが買える
春夏秋冬
いつでも養豚場からトンカツが出荷される
揚げたてのように
まだ動いている
みんな街に運ばれていく
産地を気にしながら
美味しそうに食べている
そんな街の人たちも
生きてる魚をいつしか見たことがないように
生きてる自分のことも
いつしか忘れてしまった
真夜中
誰もいないカウンターに
一頭の牛丼が運ばれる
昨日まで生きていた
新鮮な牛のように
やがて夜が明ける
街の人は眠ろうとしない
朝から焼肉を焼く
焼肉という
生き物の存在を信じて
だからもう
私たち
家に帰らなくていい