【 切子硝子 】
泡沫恋歌

窓辺に置かれた
一輪ざしの切子硝子
複雑な光のプリズム
瞳の中の幾何学模様
ああ なんて楽園

だってわたしは
凡庸な人でしかない

透明の硝子は見る角度で
その色や輝きも違ってくる
光のカレドスコープ
見ることのできない局面が
そこにはありそうだ

限界はどこまでなんて
考えるのは止めておこう

地面に落とせば
美しい硝子細工も
一瞬にして粉々に飛び散ってしまう
小さな破片は凶器となって
壊したモノに抗議する

この指から流れる血は
冒涜者への怒りだ

光を集めるほどの才能もない
壊れるほどの脆さもない
それでも輝くモノに憧れて
頭の中の光たちをキーボードに打ち込む
哀しいほどに愚昧な人間

いつか いつか
完璧な図形を描きたい

そこから輝くモノが
溢れだすことを信じながら
ポチポチと……
不器用な指が流れていく




自由詩 【 切子硝子 】 Copyright 泡沫恋歌 2012-05-28 10:45:24
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