MY LIFE AS A DOG
そらの珊瑚

犬の眼をじっと見つめていると
黒々としたその瞳から
哀しみだけが
滲んでくる

犬は
なぜ自分が犬であるかを
きっと知っている
遠い昔
野生を
人間の為に捨てた存在
自由よりも不自由である幸せを選んだのだ

人間が気紛れに
腹を撫でてくれる時間だけを
心待ちにしている
優しい牙を持つ生き物

雨の降る日も
嬉々として散歩へ出かけ
我慢していた排泄物を出し
入念に匂いを嗅ぎ回り
古雑巾の匂いを漂わせながら
帰宅する

バフッと吠えて
そろそろじゃないですか? と知らせる
おまえのことを
決して忘れていたわけじゃないんだよ
ほんとうは
犬になりたいくらいなんだから
おまえの瞳をじっと見つめる
あなたは犬にはなれませんと
見つめ返された
おまえは正直だね
ああ、
哀しみだけが
滲んでくる


自由詩 MY LIFE AS A DOG Copyright そらの珊瑚 2012-05-26 11:24:12
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