習1
ズー



収穫期になれば
麻袋のような手で
水桶に蟻を放り込んだ、
わたしたち家族は
麻袋だったし、
穀物は内臓だったから
内臓を食べる麻袋と
蟻がこぼれる夏だった。
祖父と父は
得体のしれない
臓器を吐き出し、
わたしたちは
もっぱら腸を
ばらまいたものだ。
村でからっぽといえば
野良犬のことだ、
家族や村人は
男も女も関係なく
腐るほど犬を蹴りつける、からっぽは
夏を吸い込んで
腰をひきずった
野良犬だった。
桶の前で蟻の頭を
もぎ取る妹の
パンツから
はみでている
いん毛をのぞく、
輪ゴムだ。
祖父と母は
チェーンスモーカーだ。
胴体だけの蟻の列が
煙草を運んでいくのを
激怒したり悲しんだ。
蟻よりも
大きな煙草がよろよろと、得体のしれない臓器と
腸をなぞっていく、
この村では煙草だけが
生きていた。
鼻を濡らした
輪ゴムはよじれている。


自由詩 習1 Copyright ズー 2012-05-24 10:31:34
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