Tanning red
雲ひと筋ない昼下がり
日差しがもう頬を刺す
樹々は一段と深くなり
更地の砂埃の向こう
間延びたロングショットを打ち合う
2面だけのクレイコートの4人は肌が赤い
手前の広場では近所の子供が3人
古パター、ドライバーを手に手に
野球のボールを打ち合っている
と、
電柱の足元にハガキ大のチラシ
黒のゴシック体で
「あけぼの会」
パートナー紹介、出会いの場などと
名称と文面から察するに高齢者用らしい
ふん、爺さん婆さんの「あけぼの」ね
しかしチワワの丈ほどの所に
こんな小さなチラシを貼って誰が見るのだ
目線位置ではすぐ剥がされてしまうのか
それとも犬に用足しさせる老人の視点に
合わせての事なのか
犬猫が無聊を慰めてくれようというのに
男女交際、夫婦関係の煩わしさをまだ繰り返したいのか
それでもじき死に行く身なればこそ
泣いて骨を拾い、2年でも3年でも仏壇を拝んでくれる
そんな相手が地球にひとり、遺した居間にひと時
いてくれたら消え甲斐もあるというわけなのか
かくも老残は生なまと侘しいか