『出かけられません』
座一



楽園の解体工事が
とり行われようとしている
汚染された水を タイホする警官たち
風たちは 殺し合い
泥んこが 泥んこに 罪をなすりつけている

天がくれた 雨
天がくれた やさしさ
天がくれた 悲しみ
どれも受け止めるには あまりにも大きすぎて

わたしたちは
ただ愛し合いたいだけだ
5cmの手のひらが 私の指 しめつけるように
必要としている
お互いの 存在を
なのに こんなにも このすべて


薬ビンを飲みほしたまま
ぼんやりと 写真を見ている
軽のワゴンが 紅い花びらを散らかした朝
お偉いさんが 首をつる
批判していた群衆を 黙らせるためだけに

きみがくれた 喜び
きみがくれた いらだち
きみがくれた 命の重み
どれも抱きしめるには あまりにも もろ過ぎて

わたしたちは
ただ共存したいだけだ
口に運ぶスープが これ以上 しょっぱくないように
気をつけている
お互いの平穏を
なのに こんなにも このすべて


微笑みながら やってくるミサイルに
どうやって挨拶をしようか
沈黙の岸壁から 飛び降りそうな学生たちを
どうやって 引き止めようか

どうしよう?
だって どないしょう
たった一言でも 人は殺せるのだ

泣きやまないドアの向こう
君を救えない
こんなこと自身が一番 望むわけもないのに
生臭くなっていく
ちゃんと密閉しなくちゃ そして
この血ぬるい手を 誰にも 見られませんように

カーテンのすき間から 
幾億の 不幸の流星たちを 眺めている
鍵をかたく握りしめて
そろそろ終わらせてくれそうな夜を 待ちわびている

暗い部屋を 照らし出すTV画面
イエメンでは96人のテロ死
無表情なニュース司会者が
私の名前を 報じる日は 近い







自由詩 『出かけられません』 Copyright 座一 2012-05-23 22:34:09
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