財布
mizunomadoka

使い古された財布が
波打ちに漂っていた
誰かの落とし物だろうか
それとも海に帰したのか
迷いながら通りすぎた

次の晩
そこを通ったとき
もう財布はなかった
満ち干にひきとられたのか
少年が持ち去ったのか
どちらであっても何か
中身が入っていれば善いなと
思った

妻が
裏打ちされた背広の
内ポケットに穴が開いている
と言った
そういえば見覚えのある
財布だった






自由詩 財布 Copyright mizunomadoka 2012-05-23 18:13:45
notebook Home