Woodstockと宇宙船
梅昆布茶
学生服で横浜野音のロックフェスティバルにはじめて友達と行ったのは
田舎からでてきたばかりの冴えない俺
両想いだったかもしれない恋も風に紛れてどこへやら
彼女は僕とは別のさわやかな青春のむれのなかにいた
盗んだバイクで走り出せない俺はともだちを値切り倒して
改造スーパーカブを手にいれる
いまだったらトレンディだったかもなあ
乗っていたのは怪気炎渦巻く廃棄寸前の宇宙船アルバトロス
安下宿で安ウイスキーと下ネタつまみに
くだまいておだあげてトイレで吐き続けたくそ星間ワープな日々には
誰もが何かを教えてくれたし何も教えてくれなかった
充足した渇望と飢餓だけで生きていた
だって変化は前に進むことだって勝手に思い込んでいたんだもの
いつも瑣末なものに足をとられながら
荒野の狼を夢みて吉野家の牛丼と学食のカレーの香りに満ちた風と
アジビラとアジ看の粉砕と闘争と勝利のとがった文字が
ちくちくと眼とこころに痛かった
ジミヘンドリックスがストラトキャスターを惜しげもなく燃やし
酒とブルースとTバックのすてきな温度に拍車をかけたように
悪魔を哀れむ歌がいつも背景にながれていた時代
墓標もたてずはなむけの言葉さえ思いつかずに
すぎさるにまかせたすべてのきらめきを
いまふと思いかえしているのは
きょうが休みで暇なせいなのだが
この5月の不安定な天気ににも似た
気まぐれのしわざなんだろうな
ぼくの老朽化した宇宙船にもちいさな休息が
必要なのかもしれない