爬虫類の時代
梅昆布茶
想像のちょうじょうから降りてくるものがあるんだ
延髄から降下してゆくエレベーターは脊髄を各階どまりで
総なめして行く黒い影をともなった魔術的旋律なのだ
人間が理性なんて持ち出したのはつい最近のことさ
古代インドのウパニシャッド哲学やアリストテレスや墨子とか
長くて短い生物の歴史のついさいきんのトレンディードラマ
みたいなんだろなそういうかんがえかた
攻殻機動隊やマトリックスだって
ピンホールを通して像が倒立することだって
木漏れ日と部分日食のふしぎなメッセージだって
理性と悟性の違いだって
ほんの日常的な手品のたぐいなんだね
ぼくの心臓がドキドキしたんだ
きみが廊下を曲がってきたからね
早鐘だってあんなに打ったらこわれちまう
ぼくに理性なんてないしょうこだよね
世界は手の届くものと無限より遠くにあるものとで構成されてるって
はじめて気づいたのもあのころさ
ぼくはぽちと話せるのにきみとは話せなかった
石のつめたさと夕べの星ととこぼれそうなこころ
退屈をおてだまにしてあそび呆けてひとりきり
自転車とぽけっとには時の化石
ぼくたちが駆逐していくのは色褪せたあいどるだけじゃあない
やさしいとさかをもった爬虫類は
いつしか風化し歴史という図鑑の中の
一枚の挿絵になってしまうのさ