金環日蝕
小川 葉



靴屋でスニーカーを試着していた
少し小さかったので
もう少し大きいサイズはありませんかと店員に尋ねると
少し大きいサイズの男の人を連れてきた
いかがですかと聞く店員に
ちょうどピッタリですと告げたわたしは
その男の人を購入することにした
家に帰ったわたしは
買ったばかりのスニーカーを履こうとしたけれど
やはりそれはスニーカーではなく男の人なので
何かが違うと思い事情を聞くと
何かが違う経緯でこのようなことになってしまい
申し訳ないと男の人は謝った
とにかく夜も遅いので
男の人を泊めて眠ることにした
男の人が言う
何かが違う経緯を探るため
手がかりとなる場所へ翌朝出かけることにして
朝目覚めたわたしは
昨日買ったばかりのスニーカーを履き
電車を乗り継ぎ手がかりとなる場所へ行った
約束の場所に男の人はいて
昨夜は泊めてくれてありがとうと言う
その記憶もスニーカーのサイズも
何もかもピッタリで
ふと何かが違う気がして
空を見上げると
金環日蝕の真っ最中だった



自由詩 金環日蝕 Copyright 小川 葉 2012-05-22 22:00:52
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