憎悪の鉄道
しべ

あの人傘さしてない

田んぼの真っ黒を睨むのだ
汗が畦道を進んだ先でぽたぽた落ちてる
恐ろしいまでの星と葦の群れに
身動き一つ取れない
梳いて髪のように拐かされたら
発振に重ね合わせる
一昨年はカナリアのはっと浮かぶ夜
今夜は飛沫の色に黙り

灯りは待合室の隅に一つ
プカプカケラケラ田んぼに溶け出す
信号の赤い印字を囲んでいたら
コーラの錆びた缶が倒れた
黙視で信号の色は赤

列車の嫌らしい手つきが獰猛な夜を手繰る臭いがぽたぽた頬に細い指にかかり
振動すると
真っ暗な煙が雨を焼いて隣町を通過する時間となった





自由詩 憎悪の鉄道 Copyright しべ 2012-05-22 18:03:18
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