Cloe
月乃助

森の招待状がとどきました
差し出し人は、不明

 (  今日の午後、お待ちしています  )



宛て名は、
確かにわたし  だから   

森へ さがしに出かけてみる

母の残した麦藁帽子と
忘れな草の夢みる ワンピース
お気に入りのそれに ひさしぶりに袖をとおす

スイセンの甘い香水も 少し




杉森はまだらの光もよう
九十九折の坂道を小鳥にさそわれ のぼっていく


しばらくして出会った
黄色に陽をすった山吹たちは、たずねても
森のうわさ話に 忙しく
とりあってもくれない


瀞にひそむ ヤマメも
ひっそりと岩陰に 昼のまどろみの夢をえがいている


谷間に打ち捨てられた 石切り場の 
墓標のような岩たちも、無言の瞑想にしずみ


春色と夏色のはざまに染まる あわい空に、
じっと胡坐をかいたような 雲たちは
寛ぎのはて、


そこでは、ないのですね



  残雪に生まれた すずやかな山風のみちびくまま、
  背をおされ 行き着けば、


山の端に 長く くの字を描く滝のもと
木の間は、
新緑をわけ広げる 
満開の一色  紅ツツジ


ようこそ、
 ようこそ、
  さあ さあ こちらへ、、

(  ありがとう・・・・、ほんとうに わたしは、
   一人ぼっちではないのですね  )





森の皐月の宴は、いまがさかり
新参者に 命をふきこむ











自由詩 Cloe Copyright 月乃助 2012-05-21 22:26:22
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