幸せな少女
永乃ゆち
あの頃不幸であることがなぜか魅力的に思えた
何一つ不自由のない暮らしをしてお姫様のように扱われていた
車窓から一瞬目に飛び込んできた物乞いの目は淀んでいたか
柔らかなベッドは居心地が悪かったから床に寝そべっていた
私大人になったら物乞いのお嫁さんになろう
そう考えた次の日には何のためらいもなく柔らかなベッドで寝た
幸せの渦中に置かれているとそれが何だか分からなくなる
彼女が大人になる頃にはもう物乞いのお嫁さんにはなりたくないだろう
お姫様の幸せがある
物乞いの幸せがある
一生交わることはない