抗う
岸かの子

こえなきこえをわがむねに
声に出せない声を
描いても描ききれない
キャンパスの白に圧倒されながら
呼吸を忘れた金魚のごとく
口先だけを水面から出し
日常な非日常を生きている

片づけたはずの古い記憶からは
砂を噛みしめている苦い日々が
溢れてきた
神はなんて不公平
まともに生き続けるしかできなかった
あの日々が燃えてしまえばいいと
何度思ったのに

恐怖と極度の緊張と不整脈と戦いながら
夢の中で幸せな毎日を願うしかないのか


自由詩 抗う Copyright 岸かの子 2012-05-21 02:31:54
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