マーブル

些か眠りの底を掬い上げて 見あげる空には、白いワンピースのお空がふあんふあんとしています
その白いひだをどなたか、見ませんでしたか?

 
  しずかに落着したあおみどりのことりを知りませんかと 風がといかけた

 髪の狭間に揺れる 
  ふしぎな音の調かしら
 暮れなずむ曖昧な色彩
  それらは無言の手紙かしら




アンダンテ に  めくるページの  風のしわざね


           と


わたくしは群青の溜息をはるか先の岬へと飛ばすのです

   あなたがタクトを振るときのように

弓なりになった曲線を  追い求めて  

それは落葉のように
 時さえもないような世界なのです



すべては  風まかせに   
     

     大空のかなたで  


あなたの旋律は  腕になり   


背中になり


        足音になり



細胞になります



おいで  風よ


なにもおそれずに  おいでと


手招きするわたくしの目はどんどんと深いみずうみになり  とおいとおいお空の橋をわたり

     







          トンっと




あなたのこころにノックしました   きいっと軋む音がいたしまして  ドアはひらかれるのです


   ほうら   こころのノックの時間ですよ



いつかのおばあさまが使っていた魔法の言葉です



すると、   


     風はスルリと


             魔法を吹き消してしまいました



おばあさまは悲しそうにこう云うのです


風はやさしくもなく こわくもないのよ




わたくしは風に怒り悲しみ歓び嘆いた日々を浴槽に浸して思い返していましたのです



風のいたずらねと   すまし顔で  

風はわたくしの一部分なのだと見えないその姿をわたくしは笑うしかできなかったのです





あなたの風に溶けた言葉は幾つありましたか?




自由詩Copyright マーブル 2012-05-20 15:04:25
notebook Home