胡坐くらいは許します
藤鈴呼
昔は 汚れているのが 当たり前だったのに
こんなにも 不衛生を 嫌う 世の中で
衛星を 眺めながら
白衣を キチッと 合わせる
其処に 一ミリたりとも
雑菌が 入らぬように
雑念ばかり 胸に 抱えた ままで
身奇麗にして 出掛けるんだ
しゃなり しゃなりと 歩くよ
誰も 知らない
部屋に 帰ると
ジャージ姿で
胡坐 欠いてる こと
暴言なんて 吐かない
そろそろ スキー シーズンだから
ボーゲンだけは
復習して おこうかな
なんて 言って
ふふっ と 笑う
ソツなく こなす 会話の輪は
彼女のもの
笑顔が 揺れる
火が 揺れる
ゆっくりと こちら側に 近付いて
傾く
今日は 防災の火 らしいのです
違います 救急の日 らしいのです
119 ですからね
朝から 町内放送が 激しかった
練習かと 思ったけど
本物の 消防車が
駆け抜けていく 音が したよ
空気は 乾いて いますから
気をつけなければ いけません
口を パカリと開けて 寝ていると
危険ですよ
翌朝 喉が カラッカラになり
落ちた筈の 夢の悪魔に
苦しめられます
唇は きゅっと 結んで
出来れば 鼾も 欠かぬように
この際 胡坐くらいは 許しますから
ゆるやかに 眠りに 就きましょう
それに 尽きます
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