【 尾骶骨 】
泡沫恋歌




桃の谷間に平野がある
触ってみれば硬い
閉塞した孤独な骨
そいつは尾骶骨びていこつという

ヒトは進化を繰り返す過程で
失われていった体の機能が
百個以上あると言われている
サルとヒトが分かれた時
二足歩行で尻尾が要らなくなった

私のお尻にも尾骶骨がある
別になんの役にも立たないけど
進化の名残りらしい
ただ 尻餅をついたら
飛び上がるほど痛い骨だ

時々 退化した尻尾の骨が
怒ったように訊いてくる
「シッポもないのに必要ないだろう?」
いいえ 要るんです

たとえば『尾骶骨』を考える時
ヒトは遥か時空の旅人となり
原始のジャングルに
想いを馳せることができる
恐竜やマンモスたち
地球に淘汰されて滅んでしまった
偉大な彼らにレクイエム捧げよう
アンモナイトの唱が聴こえる
ちょっぴり骨がブルーになるけれど……

どっこい!
進化し続けるヒトである私は
日蝕を見ることもできる
しかも私の尾骶骨は
月夜に野生の雄叫びをあげるんです




写真はFREE PHOTO 1.0
Jesus Presley様よりお借りしました。
http://www.gatag.net/



自由詩 【 尾骶骨 】 Copyright 泡沫恋歌 2012-05-18 12:53:07
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