契り
永乃ゆち

黄色いコンバーチブルを真っ赤なバラで埋めて

君を乗せて走る

君が見たがっていた

瀬戸内のあの穏やかな海へ向かう

何時間かかるか分からない

それでも構わない

花はやがて萎れ、腐敗していく

君は何も話さない

また新しく花屋でバラを買い込んで車に敷き詰める

君はバラの棘を感じない

花束に囲まれた君は瞳を閉じたまま

そう、この車は棺桶だ

生命維持装置という無機質は君には似合わない

僕は深夜君を盗み出した

もうすぐだ

もうすぐ海が見えてくる

僕はアクセルを目一杯踏み込んだ

瞬間、車は宙に浮いた

結婚しよう

この瀬戸内の海で

君が夢見た海の底で


自由詩 契り Copyright 永乃ゆち 2012-05-18 09:01:59
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