契り
永乃ゆち
黄色いコンバーチブルを真っ赤なバラで埋めて
君を乗せて走る
君が見たがっていた
瀬戸内のあの穏やかな海へ向かう
何時間かかるか分からない
それでも構わない
花はやがて萎れ、腐敗していく
君は何も話さない
また新しく花屋でバラを買い込んで車に敷き詰める
君はバラの棘を感じない
花束に囲まれた君は瞳を閉じたまま
そう、この車は棺桶だ
生命維持装置という無機質は君には似合わない
僕は深夜君を盗み出した
もうすぐだ
もうすぐ海が見えてくる
僕はアクセルを目一杯踏み込んだ
瞬間、車は宙に浮いた
結婚しよう
この瀬戸内の海で
君が夢見た海の底で