黄昏、憂鬱
シンバ

夕暮れの電車は 地獄そのものである

真っ赤な夕日をさんさん浴びて

老いも若きも 疲れ切った能面を 血糊で真っ赤に染めている


学生達が大声で憂さ晴らし

卸したてのスーツを着た若者達が 見知らぬ誰かを大声で馬鹿にする

優先座席を追われた年寄りが 黙して彼らを覗き見る


車内には 美しい言葉で溢れている

焼き増しされたポップスのような そらぞらしい言葉が

価値観やら正義感やらを 舌を滑らかにするだけの 潤滑油にまで貶めた

あげく駈け引きの道具となりはてた むなしいむなしい奇声が



たった二駅だったが 僕にとっては地獄であった

誰か窓を開けてくれないか

そう切に願ってしまった

連れ合いが一駅で降りたのは わずかな救いであった



自由詩 黄昏、憂鬱 Copyright シンバ 2012-05-17 00:34:22
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