ほつれ むらさき
木立 悟






火をなぞる火
けだものの火
溶け流れても
火をなぞる指


短く忘れ
帰り道に手を結び
思い出す
朝の遠さ


狩るもの
水の両腕
霧を指す霧
副葬品を運ぶ径


宵越しの氷河期
遠回りの荒野
径はいつも
繰り言ばかり


緑を迎えにくるむらさき
石の足は土になり
進みつづける呪いから逃れ
静かな再会を見つめている


力の入らない渦まきを
常に右腕に重ねあわせて
風の柱 降りてくる色
死神の馬の駆るところ


湖の水を飲もうと
飾られた枝が身をかがめる
花の匂いに動けぬ牛
人形の背の溶ける昼


洋上の選挙
海鳥の冷やかし
箱は沈むのに
皆それぞれに帰りゆく


炭で描いた絵
二本足の午後
曇 鐘 時 鳥
振り返る顔が 熱にゆがむ


絵を描き終えてはじめて
白の絵の具の失いことに気づく
常にゆるやかで見えない
傷と午後のはじまり


かわいては濡れ 泥羽は
緑とはぐれたむらさきを追う
落ちた橋のむこうへと
迎えの来ない背中へと





























自由詩 ほつれ むらさき Copyright 木立 悟 2012-05-16 21:16:55
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