Secret Forest
南 さやか

甘い匂いを放ちながら 闇が降りて来る
重い霧がすこしだけ晴れて そこだけがうっすらと仄白く
命を吹き返したように夜が始まる

風があなたの合図
今着いたよ…と云うように 私の前髪を巻き上げて
右肩を通過するのが あなたの癖

嗚咽のように揺れる枝にくちづけながら
いちばん弱い私を解き放つ
そしてかすかな心音を探りあてて
音楽みたいにあなたについて行く

隠すものなど何もない

あの頃のふたりがそうしたみたいに
時間を超えて愛し合う 幻惑の森に

舞い上がる 二つの魂




自由詩 Secret Forest Copyright 南 さやか 2012-05-15 23:58:45
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