Secret Forest
南 さやか
甘い匂いを放ちながら 闇が降りて来る
重い霧がすこしだけ晴れて そこだけがうっすらと仄白く
命を吹き返したように夜が始まる
風があなたの合図
今着いたよ…と云うように 私の前髪を巻き上げて
右肩を通過するのが あなたの癖
嗚咽のように揺れる枝にくちづけながら
いちばん弱い私を解き放つ
そしてかすかな心音を探りあてて
音楽みたいにあなたについて行く
隠すものなど何もない
あの頃のふたりがそうしたみたいに
時間を超えて愛し合う 幻惑の森に
舞い上がる 二つの魂