燻製
HAL
ある用事があって久しぶりに
母校の大学の図書館を訪れた帰り坂
どこかから何かを燻らしている様な
芳しいとも苦っぽいとも想える
懐かしいような想い出したくない様な
薫りが否応もなくぼくを包みはじめた
それだけで少しずつ遥かな記憶の
フラッシュバックにぼくは襲われた
その光の強い点滅の中でぼくは気づいた
この匂いはこのいがらっぽい煙は
ぼくらが世界を変える変えられると
信じ疑わなかった騒乱の時代に抱いた
ぼくの青臭い熱情がまだ燻っている
紛れもないぼくの熱い想いの匂いだった
自由詩
燻製
Copyright
HAL
2012-05-15 06:19:48